虚勢

クリスマスの思い出は

割れた酒瓶と赤黒い染みがいっぱいの畳部屋。

「サンタさん」や「かみさま」なんてものが存在しない事は初めから分かっていた。

お腹が空いて、寒くて、動けなくて。隙間風の吹く、窓から聞こえる子ども達のはしゃぎ声、鈴の音が聞こえる度に自分の中の内臓が沸騰する様な感情に苛まれた。

パパは私の秘部を弄り、愛しているから頬を打ち煙草の火を押し付けるのだと言っていた。

ママは私を愛していると言いながらベランダから飛び降りた。

どれが本当の愛なのか分からなかった。

自分の事を不幸だと思った事は一度もない。

誰かに詫びてほしい訳でもない。

ただ胸の内に深く、過去にあった自身の記録として、廃墟のようになって。日差しが差し込み、ゆっくりと塵と埃を被りながら…永遠に横たわっているのだ。

メンソールの煙草を咥えながら鏡の前に立つ。

見知らぬ幼い子どもが大粒の涙を浮かべこちらを見つめている。

「…やめて」

鏡に向かい煙草の火を押し当てると、少女の姿は何処へともなく消える。

縁を切ったつもりでも、例え何処へ逃げたとしても、醜い血の呪縛からは逃れられないのだ。

自分の身体を切り裂こうとも、その事実は変えられない。

分かって欲しい訳では無い。踏み込まれたくもない。ただ、腹に突き刺した筈の刃先が先へ進んでいかないのだ。身体が石の様に強張って動けない。ぬるい涙が頬を伝う。

それでも生きる事を辞められないのが自分の弱さなのだと思う。

今季最大の氷点下の中、見上げた窓からは、小さく雪が冬空を舞っていた。

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