濁った寒空の下。如何程待とうとも決して訪れる事の無い電車を待っている。
過去はいつまでも私を追いかけてきて。
知らぬ振りも罷り通らなくなった今日この頃。
大抵の物事は、時間が忘れさせるものだと誰かが言っていたが、それは都合の良い虚言であるという事を理解するのに、然程時間は掛からなかった。
逃げて逃げて、逃げ切れなくなるまで。どこまでも終わらない鬼ごっこを続けるか。
それとも、立ち止まってみるのか。
幾重にも歪んだ黒く禍々しい物体は、手招きを繰り返しながらこちらに歩み寄ってくる。寸分たりとも歩幅を変えず、一定の速度を保ちながら、愛おしそうに、こちら側へ両手を伸ばしやって来るのだ。
湧いてくるのは、懐かしさと罪悪感。
受け入れる事も、突き放す事も出来はしない。
やるせなくて、どうしようも無い。
